遺留分について考える 支援の現場から見た遺言作成のポイント
2026/04/22
日本公証人連合会が出している公正証書遺言の作成件数は直近の統計である令和7年の件数で約12万4千件になっており、コロナ禍で作成件数が落ち込んだとも言われている令和2年対比ではプラス27%という増加率になっています。円滑な相続・資産承継のために遺言を書いておくことの重要性が浸透してきている証と言えます。
ただ、遺言を書くにあたって、自社株は後継者に全株を承継させようとか、一番良く面倒を見てくれた子に全財産を渡したいといった想いが強すぎて、遺留分のことを考慮に入れるのを忘れてしまうと、後々紛争のタネにもなりかねません。今回は遺言を書くにあたって、遺留分に関してどんなことに注意すべきかをご一緒に考えてみましょう。

1.基本的な考え方
ここで遺留分について簡単におさらいをしておきます。遺留分とは、民法上で一定の範囲の相続人(配偶者、子、直系尊属が対象であり、兄弟姉妹は含まれません)に保障された相続財産に対する最低限の受取り分です。この遺留分を受け取ることができない相続人は遺留分侵害額請求という形でその権利を主張することができます。つまり揉めてしまうわけです。
したがって、円滑な相続・資産承継を実現するためには遺言を書く際に遺留分への配慮は欠かせないということになります。まずはこの点が重要なのは言うまでもありません。
2.遺言作成時の遺留分の計算の落とし穴
遺留分は民法第1042条で直系尊属だけが相続人の場合は法定相続分の1/3、それ以外の場合は同1/2と定められており、割合だけを考えれば基準は明確です。問題はその割合が乗じられる財産の価額です。民法第1043条第1項では「遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする」と規定されていますが、この「財産の価額」は判例や通説において時価と解されており、いわゆる相続税評価額とは違うものになります。
相続・資産承継を考える上では、相続税がいくらかかるかを試算することは極めて重要です。ただ、その時に使った相続税評価額で遺留分を計算して遺言を書いてしまうと、いざ相続が発生した場合に遺留分侵害が発生してしまうことが有り得ることには十分留意する必要があります。
3.特定の相続人に多くの財産を遺す遺言作成時の留意点
それでも特定の相続人に多くの財産を遺したいという想いから遺言を書かれることはあると思います。例えば、企業オーナー方が、複数いる子のうち会社の後継者に自社株はすべて承継させたいとか、再婚されている方が前妻との子もいる中で現在の配偶者に財産のほとんどを遺したいといった場合が考えられます。その時には、多く受け取られる方が遺留分侵害額請求を受けた時に応じられるように、金融資産等の換金性・流動性の高い資産がどのくらい手許に残るかを生命保険の活用も含めて考えてあげる必要があると思います。
4.遺言作成時の付言事項の活用
これまで見てきたように、遺留分は相続人の側に認められた権利であり、遺留分侵害額請求を起こすことを止めるのは難しいものではあります。ですが、遺言の付言事項で、なぜこのような配分にするのかを丁寧に説明し、遺言どおりの配分で納得して欲しい=遺留分侵害額請求を起こさないで欲しいという遺言者の想いを伝えることは可能です。
付言事項には確かに法的拘束力はありませんが、何を誰に遺すということを記載する様式に忠実な遺言本文よりも、直接的に遺言者の想いを伝えることができるので、相続人に対する心理的な影響は思った以上にあるものと思います。「お父さんがそう考えているなら」「お母さんの最後の頼みだから」と考える相続人も多いのではないでしょうか。
5.遺言は見直しが重要
必ずしも遺留分という観点からだけではないですが、遺言は一度作成したら終わりというものではありません。例えば、婚姻中に子供に財産を遺すという遺言を作成した後に離婚し、その後再婚したにも関わらず、遺言の見直しをしないと現在の配偶者から子供が遺留分侵害額請求を受ける可能性も出てきてしまいます。
相続人の状況や財産の内容が変わる、あるいは遺言者の想いが変わることは当然あり得ますので、定期的に遺言内容を見直して、必要に応じて書き換えることも大事だと思います。
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